石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)が、平成17年2月24日に公布され、平成17年7月1日から施行されることになりました。
制定の趣旨
石綿は、1970年代から1990年代にかけて大量に輸入された石綿の多くは、これまで建材として建築物に使用されましたが、今後この時期に建築された建築物等の老朽化による解体等の作業が増加に伴い解体工事従事労働者の石綿による健康障害の発生が懸念されます。
事業者が講ずべき措置の内容が特化則に定める他の化学物質に係るものとは大きく異なることとなることから、新たに建築物等の解体等の作業における石綿ばく露防止対策等の充実を図った単独の規則を制定し、石綿による健康障害の予防対策の一層の推進を図ることとしました。
石綿(アスベスト)の有害性
石綿粉じんを吸入することにより、肺がん、中皮腫等の健康障害を発生させることが明らかになっており、職業がんとして労災の認定を受けた件数の約8割を、石綿によるがんが占めています。これらの疾病については、石綿粉じんを少量吸入しても発症する可能性があり、また、石綿粉じんのばく露から発症までの期間が相当長いこともあります。 石綿を直接取り扱っていない場合でも、建築物から劣化した石綿粉じんが発散し、その粉じんを吸入する可能性があります。
石綿則に定める主な措置事項
1 事前調査(石綿則第3条、第8条関係)
(1) |
事業者は、建築物等の解体等の作業を行うときは、あらかじめ、石綿の使用の有無を目視、設計図書等により調査し、その結果を記録しておかなければなりません。調査の結果、石綿の使用の有無が明らかとならなかったときは、分析調査し、その結果を記録しておかなければなりません。 ただし、石綿等が吹き付けられていないことが明らかで、石綿が使用されているとみなして対策を講ずる場合、分析調査の必要はありません。 |
(2) |
建築物等の解体等の工事の発注者は、工事の請負人に対し、当該建築物等における石綿の使用状況等(設計図書等)を通知するよう努めなければなりません。 |
2 作業計画(石綿則第4条関係)
事業者は、石綿が使用されている建築物等の解体等を行うときは、あらかじめ次の事項が示された作業計画を定め、当該作業計画により作業を行わなければなりません。
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作業の方法及び順序 |
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石綿粉じんの発散を防止し、又は抑制する方法 |
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労働者への石綿粉じんのばく露を防止する方法 |
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3 届出(安衛則第90条、石綿則第5条関係)
(1) |
耐火建築物又は準耐火建築物における吹付け石綿の除去作業については、工事開始の14日前までに所轄労働墓準監督署長に届け出なければなりません。 |
(2) |
次の作業については、工事開始前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。
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石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含有断熱材の解体等の作業 |
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(1)以外の吹付け石綿の除去作業 |
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4 特別教育(安衛則第36条、石綿則第27条関係)
事業者は、石綿が使用されている建築物等の解体等の作業に従事する労働者に次の科目について教育を行わなくてはなりません。
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石綿等の有害性 |
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石綿等の使用状況 |
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石綿等の粉じんの発散を抑制するための措置 |
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保護具の使用方法 |
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その他石綿等のばく露の防止に関し必要な事項 |
5 作業主任者(石綿則第19条、第20条)
事業者は、石綿作業主任者を選任し、次の事項を行わせなければなりません。
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作業に従事する労働者が石綿粉じんにより汚染され、又はこれらを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。 |
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保護具の使用状況を監視すること。 |
6 保護具等(石綿則第14条、第44条から第46条関係)
(1) |
石綿を含む建材等の解体等をするときは、労働者に呼吸用保護具(防じんマスク)、作業衣又は保護衣を使用させなければなりません。 |
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(2) |
保護具等は、他の衣服から隔離して保管し、廃棄のために容器等に梱包したとき以外は、付着した物を除去した後でなければ作業場外に持ち出してはなりません。 |
7 湿潤化(石綿則第13条関係)
石綿を含む建材等の解体等をするときは、それらを湿潤なものとしなければなりません。
8 隔離・立入禁止等(石綿則第6条、第7条、第15条関係)
(1) |
吹付け石綿の除去を行うときは、当該作業場所をそれ以外の作業場所から隔離しなければなりません。 |
(2) |
石綿含有の保温材、耐火被覆材、断熱材の解体等の作業を行うときは、当該作業に従事する労働者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を表示しなければなりません。 また、特定元方事業者は、関係請負人への通知、作業の時間帯の調整等必要な措置を講じなければなりません。 |
(3) |
その他の石綿を使用した建築物等の解体等の作業においても、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を表示しなければなりません。 |
9 注文者の配慮(石綿則第8条、第9条関係)
1 |
情報の提供 建築物等の解体工事等の発注者は、工事の請負人に対し、当該建築物等における石綿含有建材の使用状況等(設計図書等)を通知するよう努めなければなりません。 |
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2 |
工期、経費等の条件 建築物等の解体工事等の注文者は、作業を請け負った事業者が、契約条件等により必要な措置を講ずることができなくなることのないよう、解体方法、費用等について、法令の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮しなければなりません。 |
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10 建築物に吹付けられた石綿の管理(石綿則第10条)
(1) |
事業者は、その労働者を就業させる建築物に吹き付けられた石綿が損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該吹付け石綿の除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければなりません。 |
(2) |
事務所又は工場の用に供される建築物の貸与者は、当該建築物の貸与を受けた2以上の事業者が共用する廊下の壁等に吹き付けられた石綿等が損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、(1)と同様の措置を講じなければなりません。 |
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(引用:「既存建築物の吹き付けアスベスト粉塵飛散防止処理技術指針・同解説」日本建築センター) |
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